Writer:
Hisashi Ogiso
Founder & CEO
こんにちは、ストラボ代表の小木曽です。
「ハーバードの人生が変わる東洋哲学」を読みました。個人的に面白かった内容を大きく3点に絞りシェアします。
ヒトは感情に抗えない
紀元前4世紀の竹簡群から見つかった「性自命出」には、次のように書いてあります。
喜怒哀楽の感情の気は、生まれつき備わっている。
それぞれの感情が外にあらわれるのは、ものによって引き出されるからだ。
およそ2300年から2400年前であり、僅か38年しか生きていない新参者の私からすると途方もない昔に、ある人間が竹にこのように書いている姿を想像すると、セネカ(詳しくはこちらの記事をどうぞ)よろしく、人間はいつの時代も変わらないと感慨深いものがあります。
さて、筆者は先ずこの性自命出を引用して、ヒトは自分を単一かつ統一されたものと捉え、内省により自己を見出そうとすることを指摘しています。
その上で、そのように捉えるのではなく、ヒト=自分とは、様々な感情や性向、願望や特徴が常にごちゃまぜ状態であり、いつも違う方向や正反対の方向へ引っ張られている存在と捉えることもできるだろうと指摘しています。
そうすることで、ある時点で凍結したまま自己を定義する危険を回避できると言っています。孔子なら自分の行動パターンを知り、ゆっくり時間をかけて行動パターンを打破するだろうと。そうすることで、未熟で感情的な反応に引きずられるのではなく、建設的な振る舞いができ、より良い人間へと成長し始めるとしています。
決めつけは可能性を狭め、善が広げる
決めつけが可能性を狭めることは、書籍「Range」でも結論として同じことを指摘していますが、筆者も、自分がこういう人間だと決めつけるのは、「全体の状況を感じ取る繊細さ」、「返せる反応の幅」、「示せる善良さ」に自ら制限をかけることだと言っています。
止めどなく移ろいゆく世界の中で、まず全容を見極めてから決断を下すには、自分の感情を鍛錬しなければならないとのこと。「様々な方向へ向かいうる複雑な自己、複雑な世界、複雑な道筋」の観点から決断というものを考える意味を学ぶ必要があると指摘しています。
そして孟子いわく、状況の複雑さを十分に見抜く力を培う唯一の方法は、「どうすれば自分の行動が建設的な道筋に繋がるか」を読み解く能力とし、その根底には善があり誰しもがそれを備えて生まれてくると言っています。
複雑性を受け入れる
また筆者は、世界に条理があると考えて理性的に人生の重要な決断を行う場合、私たちは分かりやすい状況や可能性、揺るぎない自己、常に変わらない感情や世界を前提としていると指摘しています。
しかし、それは結局、ベースは現時点での自分であり、未来への時間の流れの中で、世界や環境が変化することが考慮されていないとしています。
そして、筆者曰く、煩わしい現実の複雑さから自分を切り離しているが、その複雑さは自分が人間として成長するための基盤となるとのこと。私もそうですが、森羅万象から目の前の複雑な仕事におけるタスクまで、複雑であるほど、そこを突き詰めて考えることはタフなことであるため、重要でないコトに対しては、目を背けてしまいたくなることもあります。
しかし、その複雑性が当たり前であり、本質である以上、そこを克服しようとするのであれば、直視は必須という考えが身に染みます。これはエントロピー増大の法則を考えても納得といえます。筆者は代替的な考え方として、マクロ的には世界は常に不安定で絶え間なく変化をし、複雑であること(VUCAですね)、そして個人的に特に大事だと思うのですが「変容し続ける複雑な自分」という認識に基づいて、決断や反応をせよとしています。
そして最善の結果は、長期的な道筋という観点から物事を考える時であり、最も広がりのある決断は、ものが育つ土壌を作ることだと述べています。またミクロ的には、本当の自分探しや人生設計に悶々とするのではなく(なぜなら答えは出ないので)、むしろ日常レベルで些細な変化を起こすことにリソースを使えと言っています。その結果、自分の周りに素晴らしい共同体ができ、そこで人々は繁栄する。そしてより良い世界を築くための取り込みに終わりはないと言っています。
選択や感情という人生の奥行きを嗜む余裕を
今回の書籍は文庫で260ページあり、結構文字がびっしり詰めてあるのでそこそこのボリュームがあります。そして、孔子、孟子、老子、荘子、荀子の様々な切り口の思想は多様で奥が深く情報量が多いです。
その中で私が関心を持った上記3つは、「選択・決断」、そしてそれについてまわる「感情」についてであり、今自分がそのあたりに強い関心があるというのが改めてよく分かりました。
いい読書体験、偉人との会話でした。
筆者のマイケル・ピュエットさんに感謝です。